Topics

出張先への移動時間と労働時間の関係

2014.10.21労務

 出張の移動時間に関する取扱いについて、判例、通達での考え方として「労働時間とは、使用者の現実的・具体的な指揮命令下における業務従事時間」という原則があり、出張の移動時間は業務に服するため、時間を拘束されてはいるものの移動中に会社の指揮命令下で業務を行うということは通常無い為、労働時間には該当せず、時間外・休日労働の支払は不要である。というのが基本的な考え方です。 (通勤と同様、寝たり、本読んだり、移動時間は自由に使えるというのが根本的な考えです。)  illust596.gif
ですので、以下のいずれのケースの出張においても、出張による移動時間は労働時間とはならず、割増賃金等の支払は原則として不要となります。
 ▶  移動に1日かかるわけではないが、朝一番のミーティングに間に合わせるため、前日に移動する場合
 ▶   海外出張など、遠方に赴く場合の移動日
 ▶   休日に出発もしくは帰着のため、移動をする場合
ただし、出張の移動時間はどのような場合でも労働時間にする必要が無いわけではなく、以下のような場合は労働時間として取り扱う必要がございますので、注意が必要です。
 ▶  運送業やタクシー業など、移動することが業務である場合
 ▶   出張の出発前に会社への出社を義務付ける場合は、出社時間を事業時間とした労働時間となる
 ▶   機密文書や商品など、移動中に監視が必要になり、業務性を帯びている場合
 ▶  上司と随行し、移動中も自由に時間が使え無いなど、使用者の指揮命令下にあると判断される場合

【参考】
 通達 昭23.3.17基発461号、昭33.2.13基発90号
  「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない。」
 判例 日本興業検査事件(横浜地裁川崎支部 昭46.1.26)
  「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常の出勤に費す時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起り得ないと解するのが相当である。」
 判例 横河電機事件(東京地裁 平6.9.27)
  「国内・国外旅行を問わず、移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実勤務時間に当たると解するのは困難であることから、直ちに所定就業時間内における移動時間が時間外手当の支給対象となる実勤務時間に当たるとの解釈を導き出すことはできない。」
その他お知らせ一覧へ戻る
pagetop pagetop